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化粧をしている女性は入浴前にクレンジングで化粧を落とします。クレンジング剤やクレンジングで乳化した化粧品がCLに付着すると取れにくく曇りの原因になりますので、クレンジングの前にはCLをはずす必要があります。したがって、化粧をする女性は入浴時にはすでにCLははずしているはずです。 では、化粧をしていない人たちはどうでしょう。 顔を洗うということを見直してみましょう。CL装用者はCLを取扱う前に正しい手洗いをするよう推奨しています。しかし、顔洗いはあまり注目されていません。眼瞼や瞼縁を清潔に保つことは、CLを装用していなくてもとても重要なことです。 健常者の瞼縁からは84.6%の割合で細菌が検出され、主に表皮ブドウ球菌、Propionibacterium acnes(Pアクネス)、コリネバクテリウムであるとの報告があります1)。マイボーム腺にも同様の細菌が存在し、マイボーム腺機能不全では黄色ブドウ球菌の関連が大きいと推測されています2)。これらはCL関連角結膜感染症の原因菌になります。 また、マイボーム腺から分泌される油は涙液の蒸発を防ぐ役割もしており、ドライアイの観点から、特にCL装用者にはとても重要な存在です。このマイボーム腺の機能を健全に保つためには瞼縁の清潔はもっとも大切なことです。 洗顔の際に瞼縁(まつ毛の付け根)まで丁寧に洗うということを意識している人は少ないようです。前夜に濃厚なアイメイク(図1)を落として入浴洗顔し、さらに朝も洗顔してノーメイクで眼科受診してもアイメイクが残っている例(図2.3)は良く見かけます。また、化粧をしない方でもまつ毛の付け根に皮膚のカス(図4)や分泌物(図5)が固着していることは珍しくありません。これらの方には丁寧な瞼縁の洗顔(まつ毛の付け根まで洗うこと)を指導する必要があります。 まつ毛の付け根まで丁寧に洗おうとすれば、必ず、微量の水が結膜嚢内に入ります。CLを装用して入浴する場合、瞼縁を丁寧に洗えば瞼縁の細菌や水道水・浴槽内の水分を結膜嚢内に入れることになりCL関連感染症のリスクが増えます。また、結膜嚢内に水分が入らないように気を付けて洗う洗顔では瞼縁の清潔は保てず、やはりCL関連感染症のリスクは増えます。 これらのことより、CL装用者は入浴前にはCLをはずすように指導しましょう。見えない方は、入浴時にも眼鏡(できれば予備のもの)を使用しましょう。
文献
1)Hara J,Yasuda F, Higashitsutsumi M Preoperative disinfection of the conjunctival sac in cataract surgery. Ophthalmologica 211(Supp11):62-67,1997 2)横井則彦 眼瞼縁、マイボーム腺における細菌の増殖と眼疾患 細菌学から. 日本の眼科74巻6号565-568.2003 さくら眼科 院長 松久充子 |